フィリピン教育訪問に戻る

 

フィリピンでの青年平和トレーニングに参加して

 

  2006年9月19日から22日にフィリピン・ケソン市のミリアム大学でひらかれたTraining on Peace-building for Asia-Pacific Youth Leadersに参加しました。フィリピン各地はもとよりアセアン10カ国と韓国および日本からの学生や教員、NGOのワーカーが80名ほど集まっ た。広島大学から参加された3名に報告をいただいた。

 

「アジアのユースたちとともに過ごして」

  このワークショップでは、改めて「平和」について深く考えさせられました。「平和」と一言で言っても、その言葉はとても多様で抽象的です。しかし、アジア のユースと同じ時を過ごすことで、それぞれ、育った背景は異なっていても、平和への思いや平和を求める心は万国共通であることを実感しました。平和は人の 日々の生活の中にあると感じます。そして、平和はただ思うのみでは実現されず、それを妨げる具体的な問題を是正する努力により、個々人がつくり上げていく ものであると強く感じました。

  アジアのユースとの交流は、自分の国に対する見方も変えました。国際協力や平和というと、海外に目が向きがちです。しかし、国内でも多くの問題が存在しま す。自分たちの国の抱えている問題を自分たちで取り組んでいるアジアのユースの姿を垣間見ることで、日本人として自分の国で起きていることにも注意を払 い、それに取り組む重要性を改めて認識しました。

  また、自分自身の今後のあり方も考えさせられました。私は、紛争やナショナリズムに関心を持ち、将来その分野で何かできればと漠然と思うようになりまし た。このワークショップでは、ミンダナオや東ティモールのように、紛争を経験して間もない国のNGOで活動している人も多くいました。このような経験は、 問題をさらに身近なものにするとともに、自分が今後どのように関わっていくか、何をすべきかを考える切り口になりました。

アジアのユースとのつながりは、私にとって貴重な財産となりました。このワークショップを通し、目の前にある問題を知ること、考えること、それを様々な人 と共有すること、そして何より行動することの重要性を学びました。フィリピンでの経験を生かし、ここで得たつながりを大切にし、自分にできることから実践 していきたいと思います。

 (広島大学国際協力研究科 赤松 暁・あかまつあき)

 

「ユースの偉大なる力~分科会から~」

  2日目、3日目に平和をテーマにした分科会が開かれました。分科会では、紛争・権利・ジェンダー・宗教といった分野から平和についてのディスカッ ションやアクティビティを行いました。

  私が参加した “Peace with the Earth”は、地球全体にとっての平和とは何かを考えるもので、はじめに自分を自然にたとえると何になるかを一人ずつ発表しました。今まで、このように 自然 と自分との共通点を考えたことがなかったのではじめは戸惑いましたが、他の国からの参加者は積極的に自分たちのことを「風」とか「木」にたとえていたの で、私 も自分の英語力を気にするのはやめて、思うとおりに表現しました。この発表は一人ひとりの個性が光っていて誰一人同じものを選んだものはいませんでし た。その後、それぞれがうまく生活していくためにどうしたらよいかをグループになって話し合いました。この時点で、既に互いに打ち解けていて、国は違って も、通じ合うもあるなと強く感じました。そして、私たちユースのアイデアが実践できたら世界を変えるパワーを持つだろうと思い、楽しみになりま した。

 アクティビティをメインに紛争や暴力を扱ったものも多くありました。私は “ Creative Nonviolence”に参加しましたが、はじめからおわりまでユーモアのある内容で笑いのたえない楽しい時間でした。夫妻で講師を担当してい て、そのためか家族で起こる暴力についても考えました。暴力といってもそれぞれがイメージするものは違っていましたが、誰もが暴力のない世の中を望んでい ました。このように、それぞれの背景が違っていても共通する信念があることは、平和を考えていく上で重要な役目を果たすと思いました。その後、身近な出来 事を中心に話し合い、家族の存在について考えました。日本を離れてフィリピンから家族のことを考えると、日本にいる時とは違って、家族の有り難さが非常に よく分かりました。これは他のメンバーも同じようで、皆が暖かい気持ちになった瞬間でもありました。この分科会を通して、何事も基本は家族にあるのだ なと感じ、平和は身近なところに存在していることに気づきました。

 これらの分科会に参加して、「平和」は誰もが願っていることであり、私たちユースは積極的で発想が豊かであることを知りました。今後、私たちの考えが世 の中に発信されて行動に移せる機会が増えると大きな影響力になると思います。

 (広島大学総合科学部 川崎阿由美・かわさきあゆみ)

 

UNYP結成とUniversity-Festival-Tour 2006を開催

  フィリピンでのワークショップ最終日、参加国ごとにアクションプランを考える時間が設けられ、私たち日本からの参加者もプランを考えました。また参加者 の所属もさまざまで、情報交換や活動をするために、日本からの参加者で一つの団体をつくろうということになり、帰国後すぐに団体を設立しました。私たちは その団体をUNYP(United Network of Youth Peacebuilders)と名づけました。

 大学祭で何かするというプランを立てたのですが、去る10月、本格的にUNYPで活動する時がきました。“University-Festival- Tour 2006”とは平和の文化を共有するために学生同士のつながりを構築することをねらいとし、大学の学祭を回って、学生に対して平和について考える場を提供 するというものです。学生同士のつながりを構築するといっても、フィリピンで縁のあった者の所属大学での実施となりました。まず10月8日に行なわれた名 古屋市の東海学園大学の学園祭での「いわさきちひろ」についての講演に参加し、フィリピンでの報告のポスターを展示しま した。この時はポスターを展示し、それを見た人たち一人ひとりが自分にとって平和とは何かとほんの少しの間だけでも考えることができれば、それだけでも私 たちの目的にかなうと思っていました。しかし名古屋でのツアーを終えた後、ポスター展示だけでは受け手の考えがわからず、それは平和のネットワークを築く ことにはならないのではと考えるようになりました。そこで、この反省を踏まえて11月3日~5日の日程で開催された私の所属する広島大学の学祭ではポス ターとともにメッセージボードも設置しました。平和都市、広島では、平和教育が盛んに行われているようですが、平和といえば原爆のない状態、核のない状態 をイメージする学生も多いと思われました。しかしそうした核をはじめとする兵器のない状態を平和とする以外の平和について、さまざまな意見が寄せられまし た。さまざまな平和について考える場を提供しようとする場となり、前回の展示以上の成果をびを感じました。

 まだまだ手探りの段階ですが、フィリピンでのワークショップで得た知識やそれをきっかけとして設立されたUNYPを通して、より多くの人々、特に若者た ちに平和について考え、そしてその平和を維持するためには何が必要なのか考える場を提供したいと思います。また、一人ひとりが平和について考えたり、行動 していくようなきっかけづくりをしていきたいと思います。

 (広島大学国際協力研究科 川村康恵・かわむらやすえ)